掲載日:2025.7.1
少子高齢化や地域の人口減少、そして獣医師の不足といったさまざまな背景から、事業承継は動物病院にとってますます重要な課題となっています。
事業承継とは、院長さまが築いてきた動物医療や病院の運営ノウハウ、スタッフや顧客関係などの資産を円滑に後継者に引き継ぐプロセスです。事業承継は後継ぎがいる場合だけでなく、第三者への承継も含まれるため、後継者がいない動物病院さまにとっても検討の価値があります。
事業承継には、一般の事業と異なる動物病院ならではの課題があります。以下にいくつか挙げてみましょう。
1. 動物病院の運営ノウハウの継承
動物病院を運営する上で、地域性や顧客・近隣との関わり方など、長年にわたり培われた病院経営の経験を後継者に効果的に引き継ぐことが大きな課題となります。
具体的に、顧客の特徴・地域性に応じたマーケティング手法、近隣病院との連携方法等を後継者にしっかりと継承することが重要です。
2. 顧客関係の引き継ぎ
動物病院では、飼い主さまとの信頼関係が診療収入に直接影響を与えます。
事業承継を機に院長が変わることに抵抗を感じる飼い主さまがいらっしゃる可能性もあるため、顧客離れを防ぐための対策が求められます。
3. スタッフの引き留め
動物病院のスタッフは、その病院の運営や顧客関係において欠かせない存在です。
事業承継の際には、スタッフの安心感を保つことが求められます。突然の院長交代はスタッフの離職を招くこともあるため、十分な説明やサポートが必要です。
4. 適正な条件の調整
動物病院の事業承継には、医療機器や病院施設の資産の管理も関わります。
これらの資産の価値を正確に評価し、次の後継者に引き渡すための条件設定も、慎重に行う必要があります。
事業承継には、経営者や病院にとってメリットとデメリットがあります。しっかりと理解した上で、自院に適した方法を選ぶことが大切です。
メリット
1. 病院の存続
院長自身が選んだ信頼できる後継者へ引き継ぐことで、スタッフが安心して勤務を続けられ、地域の雇用が守られます。
2. 飼い主さまのかかりつけ先の維持
後継者が見つかり、病院が存続することで、飼い主さまのかかりつけ先も守られ、地域の獣医療環境を守ることができます。
3. 廃業と比較し手元に残るお金が多い
一般的には閉院(廃業)をするよりも、事業承継を行った方が手元に残る現金が多くなります。例えば、閉院時には医療機器の処分費等が発生したり、病院店舗の売却またはテナントの退去時にクリーニング等の手間がかかりますが、事業承継を行った場合は後継者へ機器や既存の内装のままで引き継げるため、不要となります。
デメリット
1. 引き継ぎの時間と労力
事業承継は短期間で完了するものではありません。病院運営もしながら、院長さま自身で後継者候補を探すには時間と労力がかかり、院長さまに多大な負荷がかかることが想定されます。
動物病院の事業承継に詳しい専門家に任せることで、相手探しの手間や専門的なアドバイスにより自身の労力を押さえながら事業承継を行うことができます。
2. 飼い主さまの不安や顧客離れ
院長が交代することで、飼い主さまが不安を感じて他院に移る可能性があります。
動物病院の事業承継に詳しい専門家に相談することで、顧客離れを防ぐ方法についてもアドバイスを受けることができます。
3. 確実に相手が見つかるわけではない
自身が納得のいくお相手が現れるかはご縁とタイミングと譲渡条件に左右されます。すぐの引退を希望される場合は、お相手が見つからない可能性もあるということが課題です。
そのため、引退を希望する時期から逆算し早めにご準備頂くことで、じっくり相手探しを行うことができ、良い相手が見つかる可能性が高まります。
動物病院業界にコネクションが強い事業承継の専門家に相談することで、より多くの候補先を紹介してもらうことで、納得のいくお相手が見つかる可能性が上がります。
事業承継を考える際、動物病院さまが検討すべき重要なポイントをいくつか紹介します。
1. 事業承継のビジョンを検討
どんな承継先を希望するか、いつ頃獣医業務を退きたいか、引き継ぎにはどのくらい残って勤務をしたいか、病院の不動産が自己所有の場合は不動産の取扱をどうするか等、事業承継に関して自身がご希望する条件を検討しておきます。
2. 早めの準備
事業承継の計画は早めに立てることが重要です。特に第三者への承継を検討している場合、良い候補者が見つかるまでには時間がかかります。場合によっては、相手が見つかるまで1年以上かかることもあり、加えて円満に業務引継ぎを行う為の期間は少なくとも6か月~1年間程度かかることが想定される為、最低でも引退を希望する3年前頃には動き出すことを推奨します。早めに動き出すほど良い相手に巡り合えることが多いです。
3. 後継者の教育とサポート
後継者が院長未経験の場合、病院運営のノウハウについて適切な教育が必要です。また、承継後も病院に残ってしばらく勤務しサポートを続けることで、病院の運営と顧客関係の安定に寄与します。
事業承継が特におすすめなのは以下のような動物病院さまです。
後継ぎがいない場合、第三者への承継によって病院を存続させることが可能です。特に地域での医療ニーズが高い場合、承継によってその地域の医療体制を守ることができます。
病院を経営する上での財務・在庫・人事・集客等の管理業務に負担を感じている場合、他の動物病院やグループ企業との提携や承継により、管理業務を引き受けてもらえ、臨床に集中することができます。
経営の不安がある場合、他の動物病院やグループ企業との提携や承継により、資本面や人材採用力等において経営基盤を強化する選択肢もあります。
動物病院を既に経営され、成長志向がある方にとって、事業拡大の一環として事業承継により病院を譲り受け、新たな拠点を設けることは大きなメリットです。また、経営の多角化により安定した経営基盤を築くこともできます。
現在勤務医で独立を考えられている獣医師さまにとって、既に顧客基盤があり、医療機器等の設備を有している後継者不在の動物病院を譲り受けることで、開業直後の集客面や、開業コスト面で大きなメリットがあります。
後継者がいないことにより、動物病院を閉院してしまうと、社会インフラとしての獣医療環境が損なわれ、スタッフの雇用も維持できなくなる為、第三者への事業承継は、動物病院さまの今後の発展と地域の獣医療環境の充実に向けて欠かせない選択肢です。早めの準備と計画をもって、病院の未来を築き上げていきましょう。シグナビでは、動物病院の事業承継をサポートするための株式会社High Adoptionをご紹介しております。後継ぎがいない、事業譲渡を考えている、もしくは動物病院を拡大したいとお考えの先生は、ぜひ一度ご相談ください。
監修
森本 宏海 Hiromi Morimoto
株式会社High Adoption 事業承継支援部門 チーフ
事業承継の現場に精通し、これまで数多くの動物病院の円滑なバトンタッチを支援してきたエキスパート。後継者不在や親族内承継、M&Aを含む幅広いケースに対応し、経営者と次世代の橋渡し役として活躍している。
※本記事は、動物病院専門の事業承継支援を提供する株式会社High Adoption森本 宏海氏の監修のもと、動物病院様の課題とその解決手段として注目されている事業承継について詳しく解説しています。